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放射線治療の負担軽減を目指して ~IMRTの活用と緩和照射への対応~

放射線治療責任者 髙瀬 裕樹
がんの治療には、主に「手術」「薬物療法」「放射線治療」の3つの方法があり、病状やがんの種類、患者さんの全身状態に応じて適切に組み合わせて行われます。
放射線治療は、身体を切らずに治療できる方法として、近年技術的な進歩が続いており、治療精度の向上や副作用の軽減が図られています。
また、放射線治療は、がんそのものを治すことを目的とする治療だけでなく、がんに伴う痛みや出血、神経症状などを和らげる「緩和照射」にも用いられます。
当院では、放射線治療に必要な設備や人員体制を整え、患者さん一人ひとりの状況に応じた、より負担の少ない治療の提供に努めています。地域医療の一端として、西三河地域のがん診療に貢献できるよう取り組んでいます。
負担軽減に向けた取り組み
■ 身体への負担に配慮した「IMRT(強度変調放射線治療)」
放射線治療は、手術が困難な場合や高齢の患者さんにも選択されることの多い治療法ですが、腫瘍の近くにある正常な臓器への影響が課題となることがあります。
当院で実施している「IMRT(強度変調放射線治療)」は、腫瘍の形状や位置に合わせて照射線の強さを細かく調整することで、周囲の正常組織への影響を抑え、副作用の低減を目指す治療法です。

◼︎ IMRTが望ましい全ての適応患者さんに適応
IMRTの実施には、専門的な知識を持つ医師や診療放射線技師、医学物理士などによる綿密な治療計画と品質管理が不可欠です。当院では2024年度以降、段階的に治療体制の整備を進め、2025年度からは、IMRT適応が望ましいと考えるすべての患者さんに対して本治療を提供できる体制で治療を行っております。
患者さんの負担を考慮した「日帰り緩和照射」
◼︎ がん患者さんのQOL(生活の質)を重視した「緩和的放射線治療」
放射線治療は、がんの根治を目的とする治療だけでなく、痛みや出血、神経症状などを和らげるための「緩和照射」にも重要な役割を果たします。緩和照射は、比較的少ない照射回数(5~10回程度)で行われることが多く、身体的負担を抑えながら症状の改善を目指す治療です。
当院が属する医療圏では放射線治療を提供できる医療機関が限られており、放射線治療を受けるにあたり、お住まいの地域から通院距離が長くなる患者さんもおられます。特に複数回の通院が必要となる場合には、「不便だから行けない」「痛くて何回も通院できない」など身体的・時間的な負担が課題となることが想定されます。
こうした地域医療の背景を踏まえ、当院では患者さんの状態や治療目的を慎重に検討したうえで、診察・治療計画・照射を同日に行う「日帰り緩和照射」を2025年2月に導入しました。診察から治療までを1日にまとめることで、通院負担の軽減やQOLの維持につながる選択肢の一つとして取り組んでいます。
〈緩和照射の適応例〉
- 骨転移による痛み
- 消化管がんや婦人科がんなどによる出血
- 腫瘍による神経圧迫に伴う麻痺・しびれ
- 肺がんや食道がんなどによる気道狭窄・呼吸困難

乳がんの放射線治療における心理的負担への配慮
乳がんは日本人女性に多いがんの一つであり、放射線治療は主に手術後の再発リスク低減を目的として行われます。治療そのものだけでなく、治療環境や見た目の変化に対する心理的負担を感じる患者さんが少なくないことも知られています。当院では、乳がん患者さんの放射線治療中のご不安やストレスを少しでも軽減できるよう、治療環境への配慮を行っています。
◼︎「皮膚マーキング」なしでの治療
乳がんの放射線治療において当院では従来、患者さんの肌に直接複数のマークを描いて、肌のマークを利用して治療を行っていました。新たに当院に導入した「体表面モニタリングシステム」を活用し、皮膚マーキングなしで治療が行えるようになりました。
◼︎治療時の露出に配慮した専用ガウンの使用
乳がんの放射線治療では、治療内容に加え、上半身の露出に対して心理的な負担を感じられる患者さんもおられます。当院では、照射に必要な部位のみを開閉できる治療用ガウンを使用し、肌の露出範囲や時間をできる限り抑える工夫を行っています。治療時のプライバシーに配慮することで、患者さんが安心して治療を受けていただける環境づくりに努めています。
おわりに
当院の放射線治療科では、治療精度の向上と患者さんの負担軽減の両立を目指し、設備や体制の整備、治療環境の改善に取り組んでいます。治療方針は患者さん一人ひとりの状況に応じて慎重に検討します。治療について不安や疑問がある場合は、どうぞお気軽にご相談ください。








