DOCTOR'S INTERVIEW
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小児アレルギー〜食物アレルギーの「経口負荷試験」〜
小児科 中西久美子
当院の小児科は、西三河北部医療圏の基幹病院として小児の内科疾患全般にわたる診療を行っています。中でも近年増加傾向にある子どものアレルギーについては「小児アレルギー外来」を開設し、アトピー性皮膚炎や花粉症、喘息など多岐にわたる子どものアレルギー疾患の診療を手がけております。
現在、小児アレルギー外来の患者さんの多くが「食物アレルギー」です。当院では食物アレルギーの確定診断と食べられる安全量を見極める「経口負荷試験」を実施し、学齢期に達したときに学校給食が食べられるようになることを目標とし、診療に取り組んでいます。
「食物アレルギー」ってどんな病気?
「食物アレルギー」とは、本来無害なはずの食べ物を免疫システムが異物として認識してしまい、アレルギーの原因となる食物成分(アレルゲン)を排除するために起こる反応です。食物アレルギーの多くは、離乳食を進めるなかで、じんましんや口の周りが赤くなるなどの症状が出て気づきます。多くは乳児期に見られるのが特徴です。
0歳が34%で最も多く、以降加齢とともに漸減する。5歳以下で80%、10歳以下で90%を占める。このように日本の即時型食物アレルギーは乳幼児期に極めて多い。しかし18歳以上も5%おり注意が必要である。
※即時型食物アレルギー:原因となる食物を摂取した直後から2時間以内ぐらいで反応が認められるもので、食物アレルギーのほとんどを占めています。
食物アレルギーの原因食物の内訳
鶏卵、牛乳、小麦が多く、上位3抗原で全体の約72%を占める。また上位5抗原で約82%、10抗原では約95%を占める。このように日本の即時型食物アレルギーは特定の食物によって発症することが多い。
「食物アレルギー」の症状と診断
「食物アレルギー」の主な症状には、以下のようなものがあります。症状は1つだけの場合もあれば、皮膚、呼吸器など複数の臓器に強い症状が同時に現れる「アナフィラキシー」もあります。「アナフィラキシー」からさらに血圧低下や意識障害へと重篤化する場合を「アナフィラキシーショック」といい、命の危険に及ぶこともあります。
- 皮膚症状かゆみ、じんましん、むくみ、発赤、湿疹など
- 呼吸器症状くしゃみ、鼻水、鼻づまり、咳、息苦しさ、ぜん鳴(ヒューヒュー、ゼイゼイという音)など
- 粘膜症状目の充血や腫れ、涙、かゆみなど、口の中や唇、舌の違和感、腫れなど
- 消化器症状下痢、吐き気・嘔吐、血便など
- 神経症状頭痛、元気がなくなる、意識もうろうなど
「食物アレルギー」の診断では、原因となった食物を特定することが必要となります。最初に行うのが、血液を採取して調べる「特異的IgE抗体検査」です。アレルギー反応で血液中に作られる抗体を調べるものですが、陽性であっても食べられる場合もあるため、確定診断には「経口負荷試験」という検査が必要となります。
「経口負荷試験」で調べる「安全量」
「経口負荷試験」とは、アレルギー症状を起こす、または起こすかもしれない食べ物を、医療機関でアレルギー専門医の確かな管理のもと、少量ずつ食べて症状を確認する検査です。確定診断のために行うとともに、すでに食物アレルギーとわかっていても、安全に食べることのできる量を決めるためにも行われます。
お子さまの食物アレルギーを管理する際に大切なことは、アレルゲンとなる食べ物を全て除去するのではなく、安全に食べられる量を正しく知ることです。そのためにも「経口負荷試験」が有効となります。
ただし、「経口負荷試験」では重篤な症状が出現することもあるので、どこでも検査が受けられるわけではありません。当院の「小児アレルギー外来」では日帰り入院による「経口負荷試験」を、食物アレルギー診療に精通した専門医のもとで実施しています。
「経口負荷試験」後の食事指導
「経口負荷試験」の結果が陽性であっても、症状の重症度と症状を誘発した摂取量を加味したうえで、食べても安全な範囲で食べるよう指導しています。
陰性の場合は、負荷試験で摂取できた量を自宅で繰り返し食べてもらい、徐々に年齢相当の量まで増量しても症状が誘発されないか確認します。陽性の場合も陰性の場合も、自宅での摂取状況に応じて再度「経口負荷試験」を行うこともあります。
「経口負荷試験」の結果を踏まえ、「必要最低限の食物除去」と、食べられる範囲の定期的な確認による食生活の幅を広げることで、適切な栄養素の摂取と楽しく豊かな食生活を目指します。
早期受診でゴールを目指しましょう
このように定期的に「経口負荷試験」を実施することで、段階的に「食べられる範囲」を広げ、最終的には量の調整や一部食物の除去が必要であっても、学齢期に達したときには、できる限りみんなと学校給食を楽しめることを目標にしています。
そのためには、早期に小児アレルギー専門医に相談いただき、学齢期を迎えるまでの数年間をかけて、地道な定期受診・検査と経過観察が何より重要です。
食物アレルギーのお子さまを抱える親御さまは、食事に関してナーバスになり、お子さまの食生活について不安をお持ちです。当院では、そんな親御さまの不安を共有し、お子さま、親御さまに寄り添いながら、共に同じ目標を目指して、診療に取り組んでまいります。