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ペインクリニック
ペインクリニック外来部長 小島康裕
痛み(ペイン)の診断・治療を専門とするのが「ペインクリニック」です。「痛み」と一言でいっても原因はさまざまであり、市販薬で済ましてしまう人や、整体・鍼灸などに行く人も多く見られます。しかし、早期に「ペインクリニック」の“痛みの専門医”が関わることで、病気の早期発見と適切な治療につなげる可能性が高まります。
そもそも「痛み」ってなに?
「痛み」は誰にとっても辛くてイヤな感覚です。しかし、同時に「痛み」は身体の異常を自覚させ、危険からの回避を伝える危険信号でもあります。「痛み」と一言でいっても我慢できる程度のものから、耐えられないものまでさまざまであり、短時間で現れる急性の痛みもあれば、長期間に痛みが及ぶ慢性的なものもあります。
一般に急性的な痛みは、前述した危険信号の可能性が高いので、早急な対応が求められます。
慢性的な痛みも我慢して放置したり、自己判断で不適切な対応をとると深刻な状況に陥ったり、回復を遅らせる原因となります。何より慢性的な痛みは生活の質を低下させ、心身ともにダメージを与えます。たとえ我慢できたとしても、放置せず適切な対応が求められます。
主な「痛み」の種類
痛みの総合診療科「ペインクリニック」
一般的に病院の診療科は、体の各部位の疾患別に分かれています。これに対して「ペインクリニック」は、「痛み」という症状を入り口にして、多角的に痛みの原因を診断し、専門の診療科と連携して疾患の早期発見・早期治療につなげる総合的な診療科です。また、慢性痛や神経の障害、がんによる痛みなど、治療が難しい痛みについても、他診療科の医師、看護師、薬剤師、理学・作業療法士らとともに連携し、最適な治療を提供します。
一方、総合病院である当院では、日夜さまざまな疾患の手術が行われていますが、多くの手術では術後直後に「術後痛」が伴います。術後痛は体力の回復を遅らせ、スムーズなリハビリを阻害する要因になります。これをやわらげることでより早い術後の回復につなげたり、「がん」に伴う「がん性疼痛」をやわらげることで、患者さんががん治療に前向きに取り組めるようにするのも、ペインクリニックの大きな役割です。ほかにも、ぎっくり腰、片頭痛など、突然、激しい痛みが起る疾患も適切に診断し、早期の治療で痛みを取り除きます。
「ペインクリニック」の主な治療
当院の「ペインクリニック」では、痛みの大きさを客観的に測定できる「ペインビジョン」など、正確な診断を実現するための医療機器を導入して、治療効果の評価をするなど難易度の高い治療にも取り組んでいます。
神経ブロック
薬物療法以外にペインクリニックで行う治療の最も代表的なものが「神経ブロック療法」です。痛みを伝える神経や、自律神経、運動神経の機能を一時的もしくは長期間にわたり停止させることで、痛みを軽減するものです。
高周波熱凝固
局所麻酔薬やステロイド剤を使用した神経ブロックでは痛みがすぐ戻ってしまう場合は、高周波電流を流して熱で痛みの信号を遮断する「高周波熱凝固」という治療法も行っています。これだと遮断された神経が再生するまで、長期間にわたって痛みを抑えることができます。
経皮的髄核摘出術
椎間板ヘルニアなどの痛みを伴う代表的な疾患の治療法として、昨年から開始しました。特殊な機器を用いてヘルニアのある椎間板に針を刺して椎間板の一部(髄核)を吸引して取ったり、焼灼するもので、術後の合併症のリスクがほとんどなく、身体的な侵襲も少ないのが特長です。
脊髄刺激療法
脊柱管狭窄症をはじめ慢性的で難治性の痛みに対して行う治療法で、脊髄に微弱な電流を流して痛みの信号を脳に伝えにくくすることで、痛みをやわらげます。西三河エリアで採用している医療施設は当院のみです。(2020年10月現在)
硬膜外腔癒着剥離術
椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症など、頸部痛や腰痛、上肢や下肢のしびれを伴う疾患に対して、「硬膜外腔」というところに特殊なカテーテルを入れて癒着を剥離する手術です。
高齢化の進展に伴い、痛みを抱える生活を送る人も増加し続けています。歳のせいだから仕方ないと我慢してしまい、「痛み」が教えてくれる隠れた病気を見逃さないよう、早期受診で適切な対応を心掛けてください。