DOCTOR'S INTERVIEW
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手外科の診療 ~「手」に特化した外傷や疾患の治療~

岩月 克之 整形外科外来部長
2025年4月、当院の整形外科に「手外科」の専門外来が開設され診療を開始しました。整形外科は首から足の先までの骨、関節、靭帯、腱、神経などに関係する外傷や疾患を扱っていますが、「手外科」はその中の手指から肘の不具合を対象とした診断・治療を専門としています。加えて手の外傷ややけどのあとなどの機能、整容的な改善など、形成外科の分野も担っており、「手外科」の開設により地域の皆さまにより専門性の高い医療が提供できることになります。
「手」を一つの器官として捉えます
「手外科」は第二次世界大戦で負傷した兵士の外傷治療を通して発展してきた比較的新しい医療です。一般に「手」というと手指をイメージしますが、「手外科」が担当するのは指先から肘、いわゆる二の腕といわれる上腕までを含めており、これら全てを一つの器官と捉え、各組織の外傷・疾患の診療にあたります。
扱う組織の構造はいずれも緻密で、細い神経や血管を修復する治療には高度な技術が求められます。手外科は整形外科もしくは形成外科の専門領域に位置し、手外科専門医は手に特化した知識・技術を習得している高い専門性を持ったスペシャリストです。

「手外科」の治療は他科との連携が重要
「手外科」では、皮膚・軟部組織、血管・リンパ、末梢神経、筋・腱、関節・軟骨、骨に至るまでさまざまな組織の治療にあたります。特に手術用の顕微鏡を用いて1mm以下の血管や神経を縫合する「マイクロサージャリー」という手術技法は極めて高度な技術を要しています。
そのため質の高い治療の提供には、整形外科や形成外科の専門医との連携以外にも、救急、神経外科、血管外科、リウマチ科などとの連携が不可欠です。特に治療後の機能回復に欠かせないリハビリ科の作業療法士などとの他職種連携は患者さんの予後を左右するため極めて重要です。当院の手外科ではこのような他科との緊密な連携を図る体制を整えています。

こんな症状があれば「手外科」を受診!
非常に繊細な器官である手には、痛み、しびれ、動きの悪さなど、わずかな違和感でも症状として意識されます。手外科が扱う疾患で代表的なものには「腱鞘炎(ばね指)」「手根管症候群」「へバーデン結節」「ブシャール結節」「母指CM関節症」などがありますが、実際はこれよりはるかに多い外傷・疾患を対象としています。
馴染みのない病名が多いと思いますが、手指・肘・二の腕(上腕)にリストのような症状を感じたら手外科が扱う疾患の可能性があります。

自己判断しないで専門医に相談を!
指を誤って包丁で切った後、指がうまく曲がらなくなった。そんなとき「そのうち良くなるだろう」と放置される方も多いのではないでしょうか。しかし、実際は指の腱や神経が切断されていることも少なくありません。手指には太もものように厚い脂肪がないので、わずか数ミリ切っただけでも腱、神経や血管の切断に至ってしまいます。
外傷を例にあげましたが、「手のこわばり」が関節リウマチという内臓や骨を破壊してしまう自己免疫疾患の初期症状であるなど、わずかな違和感が深刻な病気の症状である場合もあります。早期に受診すれば治療の選択肢も多く、早い回復が望めるのは他の病気と同じです。当院に「手外科」が開設されたことを知っていただき、手に違和感がある場合は早めの受診につなげてください。
