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地域医療の真ん中に

DOCTOR'S INTERVIEW

乳がん検診・子宮がん検診
~早期発見で大切な命を守る!~

健康管理センター 産婦人科 浅田 英子(左)
健康管理センター 乳腺外科 丹羽 多恵(右)

「乳がん」と子宮の入り口(子宮頸部)にできる「子宮頸がん」は、いずれも定期的な検診により早期発見が可能ながんです。しかも他のがんと比べて早期治療で完治できる可能性が高いことがわかっています。
当院の「健康管理センター」には、専用の医療機器を用いて女性のがんを早期に見つける「レディースドック」があります。万一、がんが見つかった場合も「地域がん診療連携拠点病院」である当院の診療科と連携して、治療までスムーズに行うことが可能です。

定期的ながん検診で大切な命を守る

乳がん、子宮がん共に死亡者数が増加し続けている日本に比べ、欧米の先進国ではいずれも大きく減少に転じています。その最大の理由が早期発見・早期治療につながる定期的な検診受診率の高さです。日本の約40%と比べると格段の差があります。

女性の乳がん検診受診割合(50〜69歳)

女性の子宮頸がん検診受診割合(20〜69歳)

乳がん検診

乳がんは日本で年間9万人以上がかかる病気で現在も増え続けています。
特に30代後半から増加し、40歳台後半から50歳台前半でピークがあり、さらに60歳台まで女性の罹患率のトップを占めます。若い方にも、中高年の方にも多いがんです。
しかし早期に発見し適切な治療をすれば完治できるがんです。そのために定期的ながん検診を欠かすことはできません。検診発見の場合、より早期の状態で治療を始められています。
乳がん検診の目的は、乳がんで亡くなる女性を減らすことです。現在、乳がん死亡率が減少する効果が証明されている検査方法は、マンモグラフィのみです。

年齢階級別疾患率

乳がん発見経緯別治療ステージ割合2019年(当院)

マンモグラフィ検査

乳房の全体を確認でき、乳がんの初期にできる石灰化の検出に優れます。乳腺量の多い乳房では腫瘤の検出が困難なことがあります。

乳房超音波検査

精密検査で用いられますが、マンモグラフィが苦手とする乳腺に埋もれた小腫瘤の検出が可能です。ただし脂肪の多い乳房では病変の検出が難しいです。実施者の技能に大きく左右されます。
乳腺濃度の高い人はマンモグラフィで病変が隠れることがあり、その時は超音波検査が役立ちます。過去の画像と比較したり、マンモグラフィと総合的に判断することが求められています。

ブレスト・アウェアネスをご存知ですか?

乳房を意識する生活習慣です。自分の乳房の状態に関心をもち,乳がんの早期発見・診断・治療につながる正しい受診行動を身につけましょう。以下の4つの項目を実践しましょう。

  • 自分の乳房の状態を知る(乳房のセルフチェック)
  • 乳房の変化に気をつける(しこりや血性の乳頭分泌など)
  • 変化に気づいたらすぐに医療機関へ行く
  • 40歳になったら定期的に乳がん検診を受診する。
  • (参考:日本乳癌学会患者さんのための乳癌診療ガイドライン)

子宮頸がん検診

子宮頸がんと子宮体がん

子宮頸がんは子宮下部の管状の部分に生じるがんです。子宮体がんは子宮上部の袋状の部分に生じるがんです。できる場所が違うだけでなく、原因、リスクファクター、多発する年齢層、治療法にいたるまで、まったく異なる性質をもっています。

年齢階級別罹患率 子宮体部 2019年

年齢階級別罹患率 子宮頸部 2019年

子宮頸部細胞診

「子宮頸がん」を見つける検査は、子宮頸部付近の細胞を綿棒などでこすり取り、当院では最新の液状細胞診式で、がん細胞の有無を調べます。この検査では、細胞ががん化する一歩手前の「前がん状態(異型細胞)」を見つけられるのが特徴です。前がん状態で見つかった場合は、経過観察もしくは子宮を部分的に切り取る手術を行います。この段階の手術では子宮を温存できるため、流産や早産のリスクが生じるものの、妊娠・出産の可能性を残すことができます。進行してしまってからの治療になると、子宮の摘出や手術後の後遺症のリスクが高まり、手術治療ができないこともあります。

閉経後に増加する子宮体がんはどうやってわかるの?

当院では、子宮頸がん検査のほかに「経腟超音波検査」(オプション料金)を行なっています。この検査では子宮の大きさや内膜の厚さ、卵巣の状態を見ることができるため、子宮筋腫や卵巣腫瘍なども見つけることができます。
「子宮体がん」は子宮内膜の厚みが増すため、経腟超音波検査で異常がわかることがあります。内膜の厚さに異常があれば精密検査をおすすめします。

乳がん・子宮頸がん検診 Q&A

Q.乳がん検診・子宮頸がん検診は2年に1度で大丈夫?

A. 乳がん検診(マンモグラフィー検査)は40歳以上、子宮頸がん検診(子宮頸部細胞診)は20歳以上で、2年に1度の公費助成があります。公費助成がなくても、家族に乳がんの患者さんがいる方や、過去に子宮頸がん検診で異常を指摘された方は、可能な限り毎年受診していただきたいと思います。

Q.マンモグラフィ検査が痛すぎるのですが…

A. マンモグラフィ検査は、透明の板で乳房を挟み、なるべく薄い状態にしてから撮影をします。乳房を薄くすることは診断の精度を高めるとともに、無駄な放射線被ばくを防ぐことにつながるのですが、圧迫による痛みが生じます。緊張すると痛みを感じやすくなるので、撮影時は深呼吸をして体の力を抜くことが大切です。撮影にかかる時間は数秒ですから、その間のわずかな我慢が大きな安心につながると思ってください。

Q.子宮頸がんのワクチンを打てば検査はしなくていいですか?

A. 子宮頸がんの主な原因は、性交渉により感染するヒトパピローマウイルス(HPV)です。現在、ワクチン接種により子宮頸がんは予防できるようになりました。イギリスやスウェーデンでは、ワクチン接種による子宮頸がんの減少効果が報告されています。
ただし、ワクチンで全ての型のウイルスを予防できるわけではないので、ワクチンを接種しても定期的な子宮頸がん検診は必要です。