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地域医療の真ん中に

DOCTOR'S INTERVIEW

婦人科 低侵襲手術 ~お腹を切らないで治す手術法~

産婦人科代表部長 針山 由美

産婦人科代表部長 針山 由美

病気の原因を取り除くため臓器を切除したりする外科手術は、治療の中で最も患者さんの身体的な負担を伴うものです。しかし、近年は手術方法の飛躍的な進歩により、患者さんの体に与える負担を大幅に減らすことのできるさまざまな「低侵襲手術」が開発されてきました。
当院の婦人科では低侵襲手術の代表の一つ「腹腔鏡手術」を数多く行ってきましたが、ほかにも婦人科系疾患を対象にした低侵襲手術を積極的に導入し、患者さんの負担軽減に貢献しています。

婦人科独自の低侵襲手術

子宮鏡手術

子宮用の内視鏡(レゼクトスコープ)を膣から子宮内に挿入し、子宮の中を確認しながら子宮鏡の先端に付いたメスで病変を切除します。体に傷を付けることなく治療でき、手術時間も10~30分程度と短く、入院も二泊三日程度で術後の回復、社会復帰が早期に可能です。
一方、視野が限られ操作も難しいことから術者には高度な技術が求められます。そのため日本産科婦人科内視鏡学会には「子宮鏡技術認定医」という資格があり、愛知県で取得している医師は6名だけ、内2名が当院の医師です。

主な適応 子宮粘膜下筋腫   子宮内膜ポリープ

v-NOTES

腹腔鏡手術で用いる内視鏡カメラや術具を膣から挿入し、手術で切除した臓器や病変も膣から取り出す婦人科系独自の「腹腔鏡手術」です。お腹に傷を一切付けないので、体の負担が通常の腹腔鏡手術よりさらに少なく、美容面での不安もない、より低侵襲な手術法です。保険も適応されています。

v-NOTESのイメージ
v-NOTESの創部

主な適応 子宮筋腫、子宮腺筋症など良性疾患の子宮全摘術
卵巣のう腫(チョコレートのう胞を除く)の、卵巣温存術および全摘術
※症例によって適応できない場合や、性交未経験の方は適応外となります。

腹腔鏡手術って? 現在、複数の診療科の外科手術で普及してきた低侵襲手術が「腹腔鏡手術」です。お腹に複数の穴を開け、そこからカメラと術具を挿入して手術するもので、お腹を切開する「開腹手術」と比べて術中の出血、術後の痛みが少なく、入院期間や社会復帰までの期間も短くなります。
当科でも適応する症例には積極的に腹腔鏡手術を行っています。患者さんのメリットが大きい反面、高度な技術を要することから日本産科婦人科内視鏡学会の「腹腔鏡技術認定医」という資格があり、当科の2名の医師が取得しています。

保険適応の「ロボット支援下手術(ダ・ヴィンチ)」

2012年に日本で初めて前立腺がんの手術で保険適応となった「ロボット支援手術(ダ・ヴィンチ)」は、現在、複数の診療科で普及が進んでおり、婦人科領域においても3つの疾患に対して保険での治療が可能になっています。「ロボット支援下手術」は、高度な技術を要する「腹腔鏡手術」の弱点をカバーしてくれるメリットのある手術です。

メリットの表
ロボット支援下手術(ダ・ヴィンチ)

主な適応 子宮筋腫、子宮腺筋症など良性疾患の子宮全摘術
早期子宮体がんに対する子宮全摘術、骨盤内リンパ郭清術
骨盤臓器脱に対する仙骨膣固定術

骨盤臓器脱って? 「骨盤臓器脱」とは、骨盤内にある子宮、膀胱、直腸などの臓器が下がって外に出てきてしまう女性特有の病気です。骨盤内の臓器は本来「骨盤底」という組織に支えられていますが、出産や加齢により骨盤底が緩んでしまって起こるのが「骨盤臓器脱」です。出産経験がある女性の40%程度に症状があるとされ、加齢に伴い増えてきて、進行すると排尿障害や排便障害により日常生活が損なわれます。
治療法の1つ「仙骨膣固定術」は、骨盤臓器脱の手術法の中で最も再発が少ない手術です。かつては下腹部を大きく切開する必要がありましたが、現在では低侵襲の「ロボット支援下手術」で行えるようになりました。

知っておきたい女性特有の病気

婦人科系の低侵襲手術の紹介をしてきましたが、病気の治療は手術だけではありません。他の病気同様、早期に受診してもらうことで、治療の選択肢は広がります。まずは以下のような女性特有の病気について基礎的な知識を得ることが大切です。いずれも良性疾患ですが、ひどい月経痛で悩まされたり、妊娠を妨げる原因になる場合もあります。当院の産婦人科は女性医師が多いので、「もしや」と思ったら恥ずかしがらず気軽に相談してください。

当院の産婦人科医

当院の産婦人科医

子宮内膜症 本来なら子宮の内側にある内膜という組織が、子宮の外にできてしまう病気です。
症状
月経痛がひどい 下腹部の痛みや腰痛 なかなか妊娠できない

子宮腺筋症 子宮の内膜組織が子宮の筋肉層に入り込み、子宮の壁が厚くなる病気です。
症状
月経痛がひどい 月経量が多い 立ちくらみやめまいなどの貧血症状

子宮筋腫 良性の腫瘍が子宮にできる病気です。1つだけでなく複数できることもあります。
症状
月経量が多く、レバーのような塊が出る 月経が1週間以上続く 立ちくらみやめまいなどの貧血症状 頻尿や便秘、腰痛・なかなか妊娠できない