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手術支援ロボット「ダヴィンチ」
~手術支援ロボットで、低侵襲手術を実現~

第4診療部長兼泌尿器科代表部長 橋本 良博(右)
上部消化器外科部長 井上 昌也(左)

2022年11月、当院に手術支援ロボット「ダヴィンチ」の第4世代となる最新鋭機器が導入されました。「ダヴィンチ」は、2009年に日本で認可されて以来、約400台が全国の高度急性期病院で稼働。身体的な負担の少ない低侵襲手術として知られる「腹腔鏡手術」の特長に「ダヴィンチ」のロボット機能を加えることで、より安全・正確な低侵襲手術が可能になります。導入を機に当院では、「ダヴィンチ」を用いた症例を重ねながら、幅広い疾患への対応を目指してまいります。

手術支援ロボット「ダヴィンチ」って?

現在、「がん」に代表される悪性疾患の手術療法において、患者さんの身体的な負担を軽減する「低侵襲手術」の代表が「腹腔鏡手術」です。「腹腔鏡手術」とは、お腹に小さな穴を複数開け、そこから専用の手術器具を挿入し、モニターに映し出した患部を見ながら手術を行うというものです。開腹しないため傷が小さく、術後の痛みも軽減され、回復が早いのが大きなメリットです。
反面、高度な技術を要し、術者の経験や技量に左右されてしまうのが難点でした。この「腹腔鏡手術」の課題を克服したのが、「ダヴィンチ」の支援下で行う手術です。低侵襲な術式である「腹腔鏡手術」を、より安全・正確なものするために術者をサポートしてくれる頼もしい手術支援ロボットです。

メリット1 術中の出血量が少ない

開腹手術と比べると腹腔鏡手術は出血量が少なく、さらに「ダヴィンチ」を用いることで精緻な動きができ、止血も効果的に行うことが可能となるため輸血が必要となるケースが減少します。

メリット2 術後の回復が早い

体への負担が少ないので術後の回復が早く、早期の社会復帰が期待できます。

メリット3 術後合併症のリスクが低い

「ダヴィンチ」の動きは柔軟かつ緻密で正確です。疾患部へ的確にアプローチできるため組織の損傷や合併症を抑えることができます。

手術支援ロボット「ダヴィンチ」の特長

「ダヴィンチ」には4本のアームがあり、3本にモノをはさむ医療機器具の「鉗子(かんし)」、1本に内視鏡カメラが付いています。これを体内に挿入し、術者は鮮明なハイビジョンの3D画像を見ながらアームを操作して手術をします。「ダヴィンチ」には従来の「腹腔鏡手術」に求められた高度な技術のハードルを下げるサポート機能がいくつもあり、これにより安全性と正確性が担保されます。


「ダヴィンチ」には4つのアームがあり、
カメラと3本の鉗子で手術が行われます。


術者は隣のコンソール(コクピット)で手術を行います。

サポート機能1 360度回転する「鉗子」

従来の「腹腔鏡手術」の鉗子は長い棒状のため可動域が限定されますが、「ダヴィンチ」の鉗子は360度回転し、関節もついているため自在に動かすことができます。従来の「腹腔鏡手術」では高度な技術を要した手術操作が楽にできるようになりました。

「ダヴィンチ」の鉗子は関節によりさまざまな動きが可能です。

サポート機能2 リアルで高精度な3D画像

アームに付いた内視鏡カメラを通して得られる画像は、肉眼で見るようなハイビジョンの3D画像です。しかも、10倍まで拡大ズームが可能で従来の「腹腔鏡手術」よりはるかに精度の高い画像を通して手術ができます。

3D視野のもと手術操作ができます。

サポート機能3 細かな動きと手振れ補正

術者に細かな手の震えや不慮の動きが生じても、鉗子の先に伝わらないように手振れを補正します。これにより細い血管の縫合など高度な技術が求められる細かな作業の安全性が向上します。

術者に手の震えなどが生じても、鉗子の先には伝わらない仕組みです。

手術支援ロボット「ダヴィンチ」の適応

「ダヴィンチ」によるロボット支援手術は、2012年に「前立腺がん」の前立腺全摘除術、2016年に「腎がん」の腎部分切除術が保険適用となりました。「前立腺がん」の手術は、術後に尿失禁や性機能障害という特徴的な合併症が多く生じますが、「ダヴィンチ」により細やかな作業の精度が上がることで、合併症からの回復が良好な傾向にあります。また、前立腺全摘除術は比較的出血が多い手術ですが、「ダヴィンチ」を用いてからは、術中に輸血が行われたことはほとんどありません。
消化器外科領域でも、胃がん、直腸がんを中心にさまざまな疾患に対して保険が適用となっており、適応となる患者さんに対してはすでに導入しています。また、そのほかの疾患に対しても各学会のガイドラインに準拠し、順次対応していく予定です。

「ダヴィンチ」を用いた手術を受けていただくために

「ダヴィンチ」を用いた手術を行うためには、必要なトレーニングを全て修了し、ライセンスの認証を受ける必要があります。現在、国内トレーニング施設が少ないことから、スタッフの育成がまだ十分な状態ではありませんが、早い時期に適応する患者さんにはダヴィンチを用いた手術が受けられる体制が整うと思われます。
また、病気の状態や基礎疾患などの理由でダヴィンチを用いた手術ができない患者さんは、主治医と相談のうえ、ご自身に合った最適な治療法を選択いただきたいと思います。