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脊椎脊髄センター
2019年10月、「脊椎脊髄センター」が当院に開設しました。脊椎脊髄領域に関して、小児から高齢者までの幅広い年齢層に治療実績を有するのが当院の特長です。当センターの開設により今まで以上に多くの患者さんに、安心・安全な医療の提供が可能となります。
「脊椎脊髄センター」って?
「脊椎脊髄センター」は、その名のとおり「脊椎」と「脊髄」の病気の診断・治療を専門とする組織です。「脊椎」とは一般に「背骨」と呼ばれるもので、体を支え、前後左右に曲げる運動機能を担っています。「脊髄」は脊椎の中を通る神経で、脳からの指令を伝えて手足を動かしたり、熱さや痛みなどの感覚を脳に伝えるのが役割です。
脊椎や脊髄に異常が生じる病気はさまざまですが、多くは痛みやしびれ、歩行困難など、生活の質を損なう症状が現われます。病気やけがなどによる「自覚症状」を調査したデータによると、男女ともに「腰痛」が上位を占めており(下図)、腰痛は「脊椎脊髄」の病気の代表的な症状の一つといえます。
性別にみた有訴者(自覚症状のある者)率の上位5症状(複数回答)
厚生労働省データ(平成28年度)より
「脊椎脊髄センター」が扱う病気は?
「腰痛」を伴う脊椎脊髄の病気では「腰椎間板ヘルニア」「腰部脊柱管狭窄症」がよく知られていますが、ほかに骨粗しょう症が主な原因となる「圧迫骨折」も、高齢者に多い脊椎領域の病気です。脊髄領域については、脊髄内に発生する「脊髄腫瘍」などが当センターの治療対象となります。
その他、当院では「脊柱側弯症」の外科治療も多くの実績を積んでいます。(詳細はフロンティア「脊柱側弯症の外科的治療」のページをご覧ください)
これらの中には、初期であれば、無理のない運動療法や痛みを取り除く薬物療法などの保存療法で軽快する病気もありますが、進行した場合や、中には診断次第、手術療法が第一選択となるものもあります。
脊椎脊髄領域における疾病別患者数
椎間板ヘルニア
脊椎を構成する個々のブロック「椎骨」と「椎骨」の間でクッションの役割をする「椎間板」がすり減り、組織の一部が飛び出して神経を圧迫することで腰や足に痛みやしびれを起こします。痛み止めの内服薬や注射薬で効果がなく、患者さんの日常生活が著しく損なわれ続ける場合などは、ヘルニアを切除する手術療法などが選択肢となります。また、椎間板ヘルニアの最新治療法として、ヘルニアを小さくできる薬物療法(ヘルコニア注射)が注目されており、当センターでも対応しています。
腰部脊柱管狭窄症
「脊柱管」は脊髄が通る骨の中のトンネルですが、これが狭くなって神経を圧迫し、しびれや痛みをもたらします。安静にしているときは比較的症状は軽いのですが、歩くと症状が現われるのが特徴です。椎間板ヘルニア同様、最初は薬物療法などの保存療法を検討しますが、効果が認められない場合は、脊柱管を拡げる手術などを検討します。
「脊椎脊髄センター」の特長は?
当院に「脊髄脊椎センター」ができたことは、患者さんにとってどんなメリットがあるのでしょう。センターの特長を以下のとおりまとめてみました。
専門スタッフによるチーム医療と他科との連携
当センターでは脊椎外科専門の医師に加え、脊椎脊髄の治療に精通した「看護師」、高度な医療機器を的確に使いこなせる「メディカルエンジニア」、術後の神経麻痺を防ぐため手術中の神経モニターを行う専門の「臨床検査技師」といった専門スタッフによるチーム医療体制を確立しています。さらに、脳の神経と深くつながる「脊髄」領域の病気については、当院の「脳神経外科」とも連携し、治療にあたることが可能です。
高度な医療機器による正確な診断と治療
脊椎脊髄の外科手術では、より精度の高い手術を安全に行うため「手術支援ナビゲーションシステム」を導入しています。カーナビゲーションのように、手術中に術野の正確な位置を画面で確認することができるので、より安全に手術を行うことができます。
また、診断においても正面・側面から全身撮影ができるX線機器を導入し、高精度な画像の取得による正確な診断につなげています。
さらに、患者さんの安全を担保するため、術前には検査入院をしていただき、背骨の状態を十分に把握し万全の体制で手術に臨みます。
患者さんの安全を担保する輸血システム
ほかにも当センターでは「自己血輸血」を採用し、手術を受ける患者さんの血液を最大半年前から貯血します。自身の血液を輸血するので、感染症やGVHD※の心配がありません。
当センターでは冷凍保存を採用し、患者さんの負担にならないよう時間をかけ、十分な血液を確保することができます。
※他人の血液を輸血したときに起る拒絶反応。
専門医のもと適切な治療法を選択
高齢化が進む日本において、健康寿命の延伸は国をあげた大きな課題となっていますが、脊椎脊髄の病気はそれを脅かす最たるものといえるでしょう。ところが、背中や腰の痛みを感じても、自己判断で民間療法に頼ったり、がまんしてしまう患者さんも多くみられます。脊椎脊髄の病気の中には、放置すれば命にかかわるものもあり、重症化するほど治療も難しくなります。
治療法は正確な診断のもと、患者さん個々の状態や希望に応じて選択することが大切です。もし、痛みやしびれなどの自覚症状があった場合は、決して自己判断しないで専門医を受診し、医師と相談しながら適切な治療法を選択してください。